一本の串カツが、まるで一口サイズの料理のよう。中には「創作串」という表現では足りないほど下ごしらえや仕上げに手間暇がかかっているものもある。店主のずーさんこと福井一哉さんは、自らも食べることが大好きで探求心も旺盛。彼にかかると蓮蒸しや鴨の治部煮といった金沢の郷土料理までもが串カツにアレンジされてしまうのだ。「とりあえず何でも揚げてみようかな、と思っちゃうんですよね」とお茶目に笑うが、揚げた食材の食感を生かしつつ、串カツである必然性を残し、より美味しくするための創意工夫も忍ばせている。そんな串カツを一本ずつ揚げたてで提供してくれるのだから評判にならないわけがない。長年愛されてきた片町の『ずーさん』では比較的オーソドックスな串カツで勝負してきたが、駅前に出店した『串かつ 一』では独創性と創造力が爆発。実験的な素材の組み合わせや、料理そのものを串カツに昇華させるという新しい試みで、串カツラバーたちの度肝を抜いている。半割りにした味付け玉子やぶぶあられをまとわせたエビのように華やかな串カツもあれば、見た目にはわかりにくいが食べてびっくり納得の麻婆豆腐などラインナップは実に豊富。ただし、お任せコースは本数違いの2種類のみ。追加串にも対応しているが、ぜひ余すことなく季節の一期一会を楽しんで欲しい。店は金沢駅東口からほど近いビルの2階。決して目立つ場所ではないが、5席のカウンターと小上がりだけという限られた席数のため競争率は高い。
同じ食材でも出し方を変えたり、組み合わせを変えたりして、串カツは日々アップデートしています。お客様からのリクエストが新しいアイデアに繋がることもあります。これからも面白い串カツを求めて何でも揚げてみます。自家製の燻製とTKGにも自信あります。
店主 福井 一哉