旬の地物野菜や北陸の海の幸を使った料理と、能登の銘酒「池月」をはじめとした地酒との相性が楽しめる居酒屋。 　店は片町の一角、ビルの1階で路地に面してはいるが、間口が小さく入口もひっそり奥まっているため何ともいえない隠れ家感が漂う。くぐり戸をしつらえた扉を開けると、目の前に飛び込んでくるのは調理場との距離が近いカウンター席だ。一人でも気兼ねなく寛げそうな佇まいに、初めて訪れる人は小さな店と勘違いしがちだが、実は店内はとても奥行きがあり大勢での利用も可能な構造になっている。 　料理は、客のほとんどが頼むという近海の鮮魚を選りすぐった造りの盛り合せや加賀野菜の天ぷらなど、季節の味覚がリーズナブルに揃う。店主の小板橋孝志さんは「片町だからこそ値ごろ感を大切にしたい」と、値付けを押さえることにもこだわりを見せる。素材の目利きや割烹料理の数々を学んだという修業先ゆずりの料理も好評で、仕込みに２日かけるという「エビコロッケ」や「サクサク団子」などは『なごみや』でも人気の一品だ。また、店主が学生時代のアルバイト先で培った串打ちや焼きの技術を生かした「串焼き」も店の定番メニューとして人気が高い。地元のおいしい食材を味わって欲しいとの思いから、蓮根の季節になると「金澤美人れんこん」を使った蓮根尽くしのフェアを開催するなど、名物メニューも浸透しており、シーズンを迎えるとこの味を目当てに訪れる常連客もいるのだとか。 　ずらりと並んだ焼酎のキープボトルからも居心地の良さや使い勝手の良さを伺い知ることができる。一軒目にも〆にも使えるこうした居酒屋は、片町に一軒は手札として持っておきたいものである。