入手困難酒や特約店限定酒など、日本酒好きにはたまらない品揃えを誇る小松の料理店。70種を超える個性あふれる日本酒のラインナップと、酒を一層引き立てるアテの評判は、酒屋や杜氏にまで伝わり、各地の珍しい酒を呼び込んでいる。店主の村田和也さんはオレゴン州の大学卒という一風変わった経歴の持ち主で、一時は貿易で食品を取り扱っていた時期もあるとか。店の協力店として名を連ねる十数社の取引先の中には、親戚筋である嘉永年間創業の珍味「すみげん」や「村田豆腐店」、市場内の「角源海産」もあり、「食」にまつわる縁が深い。当然のことながら、メニューには珍味や売切れ御免の新鮮な刺身をはじめ、酒の肴がずらりと並ぶ。洋食修業の経験を活かした「カニ味噌クリーミー揚げ」や「漬けマグロカツ」などは、ぜひ押さえておきたいオリジナルの人気メニューだ。肉料理も豊富で、「小松大麦うどん」や「加賀丸いもそば」「和風ビーフン」など食事物も充実しているので、若い女性グループや家族連れなども気軽に足を運んでいる。2015年のオープン以降、着実に地元で常連客を増やしてきているが、『むら田』の魅力はもっと遠くにまで響いていいはずである。声高には喧伝していないが英語対応も可能で、店主は地域の食の魅力を生産者の視点からも語れるほど地元に深く根差している。こと日本酒に至っては、機会があれば県外の酒蔵にまで出掛けて見聞を広め、新たな縁を持ち帰る。小松沖町をベースに、どんどん世界を広げているのだ。小松・加賀エリアで日本酒と肴を楽しみたい人ならば、この店は覚えておかなければならないだろう。