金沢屈指のグルメストリート木倉町の中ほどに位置する2016年に誕生したバル。オーナーがソムリエールというだけあり、ワインは常時グラスで10種ほどを提供し、ボトルも幅広いラインナップに定評があるが、この店で今もっとも注目すべきはシェフと店長を兼務する加藤勝也さんの対応力かもしれない。彼はホテルやフレンチでの経験に裏打ちされた安定感のある仕事スタイルで何でも卒なくこなすが、コロナに翻弄された約２年は、まるで実験を楽しむかのように次々と新しいことに挑戦してきた。デリバリーサービスやランチ営業をはじめ、それぞれに適したメニューを開発しブラッシュアップしながら進化してきた。 　その結果、デリバリーのユーザーが常連化したり、店舗に足を運んでくれるようになったり、通常のバル営業だけでは出会えなかった客層や需要を得て、『ランプ』の可能性は大きく開かれた。通常営業の再開後も、オープン時刻の繰り上げや、店舗営業とデリバリーの並行対応などから様々なヒントやインスピレーションを得ている。料理は旬や地物を取り入れた冷菜や温菜、魚介料理やジビエ、パスタやピザ、デザートまで、80種近くを手堅く揃えシーズンごとに更新しているが、評判の良い実験メニューはすぐにレギュラー化されるので目新しさもある。店舗営業が始まる前からデリバリーのコールが鳴ると手慣れた様子で調理に入る。「営業中は待ち時間が120分になることもありますが、それを承知で注文して下さる人がいるというのも、これまでとは違う励みになっています」と意欲的だ。10品以上をまとめてオーダーし自宅バルを楽しむ地域の顧客や、早い時間帯にサクッと飲みたい観光客の新しい受け皿として、近ごろぐっと存在感が増しているようだ。