オープン当初から注目を集め、根強い人気で存在感を放ってきた『グリエジョー』。オーナーシェフの寺西志朗さんは、黙々と調理する姿がクールだが、実は料理とワインをこよなく愛する熱き料理人だ。東京での修業時代はフランス料理店をベースに様々なレストランで経験を積み、在ハンガリー日本大使館では２年間、公邸料理人として孤軍奮闘。日本に戻った後は東京で自身の店を構え、10年近くも地域で親しまれた。しかし故郷の北陸に戻ることを決意し、2010年、金沢で新たな料理人人生をスタートさせたのである。 　寺西さんの料理は、素材の持ち味を生かしながらも、丁寧な仕込みや加工を施したものが多く、前菜の充実ぶりからもそれが伺える。肉は東京時代から付き合いのある芝浦の業者から仕入れる黒毛和牛のヘルシーなモモ肉をはじめ、イベリコ豚や川俣シャモなどを手堅くラインナップ。魚介や野菜も状態や個性にあわせて、絶妙な火入れと塩加減で鋭角的に味を決めてくる。この店のファンの多くがコスパの良さを口にするのは、何を選んでも期待以上の仕上がりで提供されるからに他ならない。地元客はもとより観光客にもその評判は届いており、コロナ以前は予約がとりにくい店の一軒としても評判だったほどだ。 　店内は、カウンターと座敷タイプの個室で構成されアンバーな照明が心地よく、大人がリラックスして食事を楽しめる空間となっている。ワインはシェフの好みでブルゴーニュやボルドーが充実。グラス片手に様々なシーンで使い分けたくなる店である。